【ギタリストの為のモード奏法】vol.02『コーダルとモーダルを感じてみる ~その1~』
※この講座はメールマガジン読者向けに連載していたもので、
全24回、PDFファイル135Pのボリュームになっています。
このブログではvol.09まで公開予定で、
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vol.02 コーダルとモーダルを感じてみる ~その1~
では、vol.02始めていきましょう。
前回は、とりあえず、「コーダル」と「モーダル」の定義を定めたところまででしたね。
この講座では、それぞれ、
・コーダル
→旋律(メロディー)よりも、和音(コード)側に主体を寄せた
演奏法(or作曲、音楽構築法)
・モーダル
→和音(コード)よりも、旋律(メロディー)側に主体を寄せた
演奏法(or作曲、音楽構築法)
と定義しました。
こう考えると、結局、主体を、和音(コード)と旋律(メロディー)の
どちらに寄せて音楽を構築するのか?と、言う話になってきますね。
なので今回は、その音楽的な主体が、どうなっていたら、
どっちに寄っているのか?を、実際にギターを弾いて感じ取っていく内容です。
では、やっていきましょうか。
■コーダルな状態を確認してみる
前回、書籍からの引用で載せた文に、
“モードとは、長調や短調などの調性音楽とは別の世界である”
とありましたね。
モード(モーダル)が調性音楽とは別の世界なのであれば、
コーダルは調性音楽の(調性音楽的な)世界だ、と言う事になります。
この「調性音楽」とは、要するに、我々に馴染みの深い、主に、
長調、短調(メジャーキー、マイナーキー)を基調として、
まとまっている音楽の事です。
(※配布している【教科書】で主に学んでいるのが、調性音楽のロジックです)
実際の所、よほど特殊な環境で暮らしているか、専門的な勉強でもしていない限り、
世間で耳にする音楽の、大半のものが調性音楽である、と言っても良いくらいでしょう。
ここまでの話を聞くと、「調性音楽」の反対が「モード的なもの」の様に感じますが、
実は「調性(音楽)」の反対は「無調性(音楽)」になります。
調性音楽は、要するに、キー(key、調)の設定に準ずる音楽で、
・トーナル・センターとなる1音
・その1音をトニックに見た基準スケール
(※メジャーorナチュラルマイナーのスケール)
・その基準スケールの構成音から導き出されるダイアトニックコード
の3つの要素で成り立っている音楽の事ですよね。
なので、上の3つの要素をハッキリさせないように音楽を構築すれば、
「無調性的」になるわけですね。
ちなみに無調性(音楽)については、正直、僕自身、概要しか知っておらず、
実際に触ったことも無いので、このテキストでは取り扱いません。
気になる方は、youtubeで『無調性』などのキーワードで検索すると、
色々と楽曲が出てくるので聴いてみて下さい。
それで今は、『コーダル(和音的≒調性的)』と『モーダル(旋法的)』を
対比させているわけですが、先ほどの引用文には「反対のもの」ではなく
「別の世界」とありました。
これは後々わかりますが、実は「モーダルなもの」も、
広義では「調性的な音楽」に含まれていたりします。
ただ、先に設定した定義の通り、「和音よりも、旋律に主体を寄せている」ので、
「コーダル」よりも調性感が緩くなっている様な状態ですね。
この「調性感」が、先ほど挙げた、キー設定の3つの要素から生まれるので、
それに準ずる(3要素を多く含める=縛りを強くする)とコーダル、
緩めるとモーダル、に寄るわけです。
では、前置きが長くなりましたが、譜例を見ていきましょう。
譜例1、key=C、1ー6ー2ー5
毎度おなじみのCキーの進行ですね。
この4小節は、Cキーのダイアトニックコードしか出てきていないので、
Cキーの調性感に準ずる、「コーダルなもの」です。
これを常識的なテンポ(大方BPM60前後~それ以上)で演奏する場合、
人間はどうやっても、C音を基準(トーナル・センター)にした、
Cメジャースケール=CDEFGABの7音から醸し出される、
Cキーの調性を感じてしまいます。
なぜ、Cキーの調性を感じるのか?についての理由は主に二つあり、
一つは、CキーのトニックコードであるCM7と、ドミナント7thであるG7の
「ドミナント・モーション(G7→CM7)」が存在している事。
もう一つは、各コードのコードトーンを見てみると分かります。
それぞれ、
CM7 = C、E、G、B
Am7 = A、C、E、G
Dm7 = D、F、A、C
G7 = G、B、D、F
となり、Cメジャースケールの構成音を全てフォローしていますね。
今は、7種のダイアトニックコードの内、4つしか出てきていませんが、
他のコードが出てきても、結局、話は一緒です。
(※Cキーだと、残りはEm7、FM7、Bm7(♭5)の3種)
仮に、CM7とAm7の二つだけを見ても、CメジャースケールのCDEFGABの内、
DとF以外は鳴っているので、かなりCキー的な響きに近い状態です。
そして、これらのコードが、
「常識的なテンポ=それなりに短い時間」
で切り替わり、その楽曲(範囲)は、全体でCメジャースケールの構成音しか
鳴らない事になるので、Cキーの調性感を保ち続ける、とそういう話です。
ですがここで、アドリブ理論などで出てくる、いわゆる、
チャーチ・モードの表記を載せたりすると、
CM7 = Cアイオニアン
Am7 = Aエオリアン
Dm7 = Dドリアン
G7 = Gミクソリディアン
などと書かれていたりして、「ん?、スケール切り替えなきゃいけないの?」と、
意味が分からなくなるわけですね。
これはこれで理屈は正しいのですが、実際は、各ダイアトニックコードと
関連付いているスケール(チャーチ・モード)を弾いている限り、
そのキーの基準スケールと同じ構成音を弾いている事になります。
例えばCキーなら以下の様になり、
CM7 = Cアイオニアン = CDEFGAB
Dm7 = Dドリアン = DEFGABC
Em7 = Eフリジアン = EFGABCD
FM7 = Fリディアン = FGABCDE
G7 = Gミクソリディアン = GABCDEF
Am7 = Aエオリアン = ABCDEFG
Bm7(♭5) = Bロクリアン = BCDEFGA
結局、Cメジャースケール(CDEFGAB)を弾いているのと同じですよね。
なので、文字面では、モード・スケール(チャーチ・モード)を切り替えてるように見えても、
全て構成音が同じなので、その楽曲(範囲)全体の調性には影響していない、と言う事になります。
逆に、上のチャーチモードの分類に反して、例えばAm7の所でAドリアン
(A、B、C、D、E、F♯、G)を弾いたりすると、Cキー関係のものに含まれていないF#音が、
コードの流れが醸し出している調性とバッティングするわけです。
この状態は、結局、「コード進行が醸しだす調性」に、強制力の様なものがあり、もし、
この進行の上でメロディーを弾く場合、コードに対して使えるスケール(≒モード)が
ほぼ固定されている事になりますよね。
上の例だと、Am7の所ではAエオリアン(=Cメジャースケール)以外は、
(厳密に調性感を守るのであれば)使えない(使いにくい)ことになりますから。
これは要するに、
「コードに対して、使うスケールが自由に選べない=旋法を選べない」
と言う事なので、先に定義した『和音側に主体が寄っている状態』だ、と。
これが『コーダル(和音的)である』と言う状態の基本です。
では最後に、今回の要点をまとめてみましょう。以下の様になります。
『ダイアトニックコードが一定の間隔(=一つ一つが時間的に長すぎない範囲)で
切り替わる(進行する)と、楽曲(もしくはその範囲)全体を構成する
音の集合体がほぼ固定されていく。
音の集合体(≒そのキーの基準スケール)が固定されていく、と言う事は、
その集合体が作り出す調性(key)も(ほぼ)固定されていく事になる。
よって、使えるスケール(≒モード)もほぼ固定されていくので、
パワーバランス的には、「和音側に主体がある」と言える。
これを「コーダル(な状態)」と言う』
と、こんな感じでしょうか。
さて、実は、モーダルの解説もこのテキストに含めるつもりでしたが、
コーダルの基本だけでそれなりの量になったので、この辺りでvol.2は終わりたいと思います。
後は他にも、例えば、
「そのキーのダイアトニックコード以外のコードが出てくる、
部分転調の様な進行(CM7-A7-Dm7-G7など)はどうなるのか?」
など、もう少しお話ししたいこともありますが、それらも次に回す事にします。
ここで全部やったらテキスト量が倍くらいになってしまうので。
それでは、次回、『モーダルとはどういった状態を指すのか?』に続きます。
ありがとうございました。
大沼
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