※この講座(vol.14)のPDFファイル版です。プリントアウトするなどして活用してください。
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http://www.shunonuma.com/report2/vol.14panamatri.pdf
【Vol.14】ヴァンヘイレンの曲から学ぶ、トライアドの実戦譜例
(※【人生で一番最初に読むギターと音楽の教科書】
テキスト全編のダウンロードはこちらのページから可能です)
こんにちは、大沼です。
今回は、Van Halen (ヴァン・ヘイレン)の Panama(パナマ)と言う楽曲を参考に、
トライアドの事例と、分数コードの仕組みについて学んでいきましょう。
この曲はかなり有名な曲なので、
もしかしたら、どこかで聴いたことがあるかもしれません。
たまにTVとかでも使われてたりしますし。
トライアドは最もシンプルなコードの単位ですが、(※パワーコードを除く)
上手く使えると、かなり印象的なフレーズが作れたりします。
さらにスケールと共に、今後の講座(というか音楽全般)で
やっていく事の基礎になりますので、しっかりとマスターしていきましょう。
前回や今回の様な実戦的な譜例は、これで学んできた内容全てを使うものです。
学習したものをしっかり理解しているかどうかで、習得スピードが大きく変わりますので、
怪しいところがあったら、以前のテキストに戻って復習しておきましょう。
今後、学んでいく内容も、過去のものを
ずっと積み重ねていった先の話になりますので。
では、参考にする楽曲は以下です。
サンプル楽曲、Van Halen – Panama
Youtube原曲リンク
http://youtu.be/w-NshzYK9y0
※万が一、リンク先の動画が削除されている場合は、
音源を購入するか、曲名等で検索してください。
譜例1、Van Halen-Panama風フレーズ 0:11~ ※原曲は半音下げです。
さて、前回、新しい曲やフレーズを練習する時に、最初にやるべきことを1つ、
お話ししましたね。
なんだったか覚えていますでしょうか?
そうです。コード進行の確認です。
楽器のフレーズは、それぞれのコードに合わせて作られているので、
フレーズは、コード進行と照らし合わせながら、セットで覚えるのです。
上の譜面で出てくるコードは、E、D、Aの3つですね。
ですが、トライアドの構造について理解していたら、コード進行の表記とは完全には合わない
トライアドのフォーム(ヴォイシング)があることに気がつくと思います。
そう、ここですね。
赤枠で囲った部分は、鳴らしている音が、
表記されているコードの構成音には完全には合っていませんね。
この辺は正直なところ、プレイヤーの解釈しだいになってくるんですが、
上の譜面のコード表記でも、間違っているわけではないのです。
例えば1~2小節目のEコードの場所。
そこに出てくる赤枠のコード(と言うかフレーズの動き)は、大きな解釈で見れば、
『Eのコード進行の中で、音(フレーズ)を色々と動かしている』ともいえます。
ちょっと難しいかも知れませんが、まあ、「別におかしなことをしているわけではない」
くらいに思っていてくれればOKです。
では「大きな解釈で見ればOK」ならば、細かく見たらどうなるのか?
次の譜面を見てみましょう。
譜例2
弾いているフレーズの動き全てに、律儀にコードの解釈をつけるとこんな感じになります。
1つずつ見ていきましょうか。
まず、4、3、2弦の9フレットのEのトライアドは、そのまんまなのでわかりやすいですね。
次のEsus4も普通にsus4のコードフォームそのままです。
1~2小節間では、EとEsus4の2つのコードを行ったり来たりしている感じです。
で、問題なのが、次のB/Eと言うコード。
ここで弾いているのはBコードのトライアドですね。
この、6弦7フレットのB音をルートに見たバレーコードから考えるとわかりやすいでしょう。
フレーズとして、トライアドはBを弾いているけれど、その小節内での大きな解釈では、
Eコードがずっと続いていると解釈しても良い、と先ほど言いましたね。
要するに、コード進行を、フレーズ一塊で大きく見るならこうで、
フレーズの動きまで細かく見るならこうなわけです。
上の2小節間は、コード進行がEの中でのフレーズの動きなので、
5弦7フレットのE(ミ)音を継続的にルート音として弾いていますね。
そのルート音Eのところで、Bのトライアドのフレーズを弾いているので、
B/Eというコード表記なのです。
要するに、X/Xというコード表記の仕組みは、
(大元のコード構成→)X/X(←大元のコードのルート音とは別のルート音)
と言う意味になります。
B/Eでいうならば、(コード構成→)B/E(←ルート音)になるのです。
このようなコードは一般的には、分数コードと呼ばれますね。
これがわかりやすくなる考え方として、例えば普通の『E』と言うコードがあるとしますね。
Eと言うコードを、無理やり分数コードにするとE/Eのように見ることが出来ます。
要するに、(コード構成→)E/E(←ルート音)の状態です。
これの左右のどちらかの方をいじったものが分数コードです。
B/Eの仕組み
※最初の2小節全体で見たら、コード進行はEと解釈して、
その中で、トライアドがBに動いていると考える。 なので(コード構成→)B/E(←ルート音)。
EコードをE/Eっぽく見る
後は、例えばこのB/Eと言う分数コードを他の表記にすると、BonE(びーおんいー)みたいに
書かれることがありますが、この場合はオンコードと呼ばれます。
分数コードとオンコードは、正確に音楽理論で解説すると違うものなんですが、
ギターで演奏する場合は、どちらでもほぼ同じような事をする、と思っていてOKです。
ですが、「本当は(その時の場面によっては)違う」、と言う事を
わかった上で演奏してくださいね。
この分数コードの表記は、演奏しているジャンルやコードの構成、
後は文脈によっても解釈が変わるので、詳しく知りたい人は、
『アッパー・ストラクチャー・トライアド』などのキーワードで調べてみましょう。
ピアノのように一度に沢山の音を出せる楽器だと、奏法の面も含めて
ちょっと話が変わってくるんですが、ギターは一度に最大で6音しか出せないので、
分数コードでも、オンコードでも、やることがあまり変わりません。
(※やろうと思えば対応出来ない事もないですし、厳密には違いますが)
後は、分数コードの上でソロをとる時などは、色々と解釈が必要だったりもしますね。
とは言え、詳しく解説するとジャズ理論のようになってくるので、今回は割愛します。
ギタリストは大体、B/EとBonEのどちらも『びーおんいー』と呼ぶし、
そう考えて弾いていることが多いです。(特にロック、ポップスのジャンルでは)
分数コードとオンコードの仕組みはちょっとややこしいので、
今後も例にする譜例で出てくるたびに、必要に応じて解説していきます。
さて、ここまで、コードがEの小節の範囲(最初の2小節)で解説してきましたね。
譜例では、その後にコードがDになっている場所もありますが、そこも
Eの部分と同じ解釈で大丈夫ですので、コードとトライアドの関係を分析してみてください。
今回の譜例で学んで欲しいのは、
・トライアドのようなシンプルなコードでも、このくらい印象的なフレーズが作れること
・分数コード(とオンコード)の仕組み
・コード進行とフレーズの関係性の分析
と、この3つですね。
このテキストでやったような考え方を理解していると、
今後覚えていく音楽理論(特にコード理論)の理解と習得が速くなります。
今まで弾いたことのある曲や、持っている譜面(スコア)で分数コードが出てきてたりしたら、
そのフレーズ(とコード)を分析してみましょう。
きっとそのフレーズがどうなっているのか?が理解できると思います。
全体的に少し小難しい話になったので、わかりにくかったら、
質問を送ってくださいね。
では、今回は以上になります。
ありがとうございました。
大沼
※Top image by ‘Billy Frank Alexander’ →facebook